ひなた村の[馬のかみしめ ウマうまポリぽり]

長井からのお取り寄せ品、今回ご紹介するのは「馬のかみしめ ウマうまポリぽり」です。これは知る人ぞ知る、長井に伝わる枝豆の在来種「馬のかみしめ」を使用した炒り豆。大真面目なのかふざけているのかわからない、その名前のヒミツも解き明かします! またまたくどくて長いレポート、どうぞお許しを。
取材・文・撮影/蓮見 則子(ふるさと長井会会員)

ソフトクリームに豆腐に納豆…ナゾの「馬のかみしめ」とは?

「馬のかみしめ」。この名前に初めて遭遇したのは2017年、道の駅「川のみなと長井」でのことでした。

長井に帰省するのは超久しぶりの浦島太郎な私には、道の駅があることだけでも驚き。「絶対に食べてほしいのは、“馬のかみしめ”ソフトクリーム!」と言われて出てきたのが、ほんのり緑色したそれ! 枝豆のソフトクリームでした。

↑馬肉が入っているわけじゃありません(^_^; 枝豆の味がする「馬のかみしめソフトクリーム」。2017年夏の出逢い。2024年4月のリニューアルで、なんとも残念ながら商品が変わってしまったようです。。。

それから数年経った昨年の夏、白金台の「八芳園 MuSuBu」で開催された長井市のポップアップイベントで、またしても「馬のかみしめ」の名前を目にすることになります。

販売されていた長井の名産品の中に、馬のかみしめ納豆と豆腐があったのです。

↑ポップアップイベントでゲットした長井の味。特に納豆は、小さいときに食べたものを思い出させるような混じりっけのない味が印象的でした。

ネット検索してみると、馬のかみしめを作っているのは長井の「ひなた村」。そこに見覚えのあるお顔を発見!

我が家で毎年、新米の季節に友人知人に送っている特別栽培米の生産者、遠藤孝太郎さんでした。

なるほど。写真で孝太郎さんの隣に写っているのは息子さんだ、きっと! 親子で「ひなた村」をなさっているのねー。(後から知りましたが、現在は代替わりして、息子・孝志さんが村長さんです)

商品ページで、納豆や豆腐と並んで紹介されていたのが炒り豆の「馬のかみしめ ウマうまポリぽり」。

ちょっと親父ギャグの入ったその名前を忘れるはずがありません。昨年、長井に帰省した際、「川のみなと長井」でちゃんと買って帰りましたとも。

↑この時の「川のみなと長井」では、塩味がいちばん売れていました。その後、何度か行って見ていると、いちばん先に売り切れるのは大抵プレーンのことが多かった!

私が最初に買った「馬のかみしめ ウマうまポリぽり」は、味付けしていないプレーン味とほんのり塩味。

炒り豆といえば節分の豆、淡泊な味(悪く言えば味がない)と思っていましたが、オトナになって食べるこの炒り豆は、また格別。

なんとも昔懐かしく、豆本来の味わいに加え、縁側の大きな竹ザルのにおい、ひなたのにおいがしてきそう。まさに大地の旨み、「長井の自然をいただいている」感じがするのでした。

それにしても長井の新名産になっているらしい「馬のかみしめ」って何?  遠藤さん親子が付けた名前?

その頃はまだ「馬のかみしめ」が古来からある大豆とは知らず、長井の名物、馬にかけたオリジナルネームだと思っていました。

今度帰ったときには、ぜひこれを作っている遠藤さん親子に会いたい!と思い、Instagramで「ひなた村」のアカウントをフォローし、ダイレクトメッセージで「今度行きますのでお時間ください」のラブコールをしてみたら…。

ほどなくして返信くださったのが、息子・遠藤孝志さん。 そして、秋も深まりまくった頃に、遠藤さん宅へうかがったのでした。

だだちゃ豆より秘伝豆より、昔からあった「馬のかみしめ」

父の遠藤孝太郎さんは、たぶん長井で知らない人はいない伝説のフォークバンド「影法師」のメンバー。40数年前(それもオドロキですが)、私が高校生だった頃に、何度かコンサートに行っていたので、バンジョー担当でお話し上手な遠藤さんのイメージ、ちょっと覚えがありました。

息子さんとともにニコニコと出迎えてくださり、さっそく馬のかみしめバナシを聞くことに…。

↑現在、ひなた村を取り仕切るのは息子の遠藤孝志さん。元郵便局員で9年前から就農。しっかりお父さまのDNAを受け継いだアイデアマンとお見受け!
↑父・遠藤孝太郎さん。2年連続で全国米食味分析鑑定コンクール品種部門で金賞を受賞。2005年には市から「長井市日本一表彰」を受けています。
↑向こうに見える西山のほうまで広がる「馬のかみしめ」畑。この時、ちょうど刈り取り時期を迎えようとしていました。あいにくの雨でしたが、晴れた日は素晴らしい景色に違いありません!

さて。ここからのお話は、枝豆と大豆の関係を知らないと混乱します(私はたまたま知っていましたが、そうじゃない人も多いと聞いたので)。

そもそも枝豆と大豆、見た目は違いますが同じものです。夏、若いうちに収穫したのが枝豆。そのまま秋まで畑で完熟し、茶色くなるまで乾燥されたものが大豆です。

まず、お二人に聞いたのは「馬のかみしめ」という品種のこと。 誰かが付けたネーミングでなく、かつて置賜地域のあちこちで普通に栽培されていた枝豆の在来種(固定種)であることが判明。

↑1990年に出版されたらしい、山形県の農作物を紹介する「作物図鑑・3」。もちろん絶版です。
↑「馬のかみしめ」は「置賜地方の在来種で、偶発実生で出たものと思われる」と説明されています。

近年、山形県で美味しい美味しいと有名になっている「だだちゃ豆」や「秘伝豆」も、元は「馬のかみしめ」だったかもしれないということ。これはオドロキ!

畑でカラカラに乾いて大豆になった時、豆の表面に現れる模様が「馬が噛んだ跡」のように見えることから「馬のかみしめ」という名前が付いたようです。

実際に、畑で見せていただくと、確かに大豆の表面には模様がくっきり!これを「馬に噛まれたよう」と例えた私達のご先祖さま、なかなかユニーク。

↑畑で、孝志さんが“さや”を開いてくれました。中から表れた豆には、確かに何かに噛まれたような凹んだ模様がありました!

遠藤さん親子と「馬のかみしめ」との出逢い

かつては置賜のあちこちで作られていた「馬のかみしめ」は、品種改良された他の豆に押されて栽培者が減り、20年ほど前は絶滅寸前だったとか。

そんな時、長井市で細々と栽培し続けていた方が孝太郎さんの元へ「なんとかならないか」と持ち込んだのがこの豆でした。

風土に合った形で作られ続けていた在来種だけあり、その枝豆は香りも味も特別なもの!茹であげたときの味がかなり濃いそうです(うわぁ、それは食べてみたい♡)。

3年ほど試食などを繰り返して驚くほどのポテンシャルを感じ、最初は枝豆のまま出荷。そのほか、枝豆を茹でてはじいて冷凍したものをお菓子などの原材料として出荷していました。

「枝豆を茹でてはじくと簡単に言うけども、その頃はかあちゃんが茹でて、こっちに俺らが並んでバケツを置いて、そこに豆をはじいてた。大変な作業で、よく『ばっかじゃねぇの』と言われたほど。

その後、1時間で6人分のはじく作業が出来る機械を導入して、劇的に楽になったんでした」とは孝太郎さん。息子・孝志さんは、まだ専業ではなかった頃のことです。

「馬のかみしめ」の枝豆は、収穫時期がわずか2週間しかないのが特徴。その時期を逃すと味や色が落ちてしまいます。種を撒く時期をずらしても収穫時期は変わりません。

そもそも誰でも知っている枝豆「だだちゃ豆」がここまで普及したのは、品種改良のなせるワザ。早生と晩生をつくって1カ月〜1カ月半ほど出荷できるようにし、それを総称して「だだちゃ豆」と呼んでいるのです。

そして「だだちゃ豆」の大豆というものは作られていない。種をまけば出てくる大豆は、その品種を守るためにあえて外に出さないようにされているわけです。

その点、遠藤さん親子の「馬のかみしめ」はなんともオープン。どんどん広まってほしいので大豆にもします。だからこそ、この炒り豆もできたのです!

やっと「馬のかみしめ ウマうまポリぽり」の話につながりました(ここまでの話が長すぎてスミマセン)。

枝豆の状態ではお菓子の材料などとして使われています。確かに、道の駅などでは、「馬のかみしめ じんだん」を使ったお菓子などを見つけました。

↑「川のみなと長井」で見つけたのは「じんだんばぁむ」。枝豆のじんだんを練り込んだと思われるバームクーヘンです。3種類ありました。
↑秋には「馬のかみしめ」大豆がそのまま販売されていました。ひと晩水につけて戻してから茹でてみると、それだけでめちゃうま〜っです♡

大豆にすると、さらに加工の幅が広がります。出荷しているのは、打ち豆、きなこ、味噌、納豆、豆腐…、そして炒り豆です!

「炒り豆は比較的新しい商品で、発売は2019年秋。もともと、上手い加工場さえあれば、炒り豆はモノになるなと思っていたんです。亡くなったばあさんが作っていた炒り豆が抜群に美味がったんだ」と父・孝太郎さんが言えば…

「ばあちゃんが作っていた炒り豆や、砂糖水で甘くした豆が美味くて美味くて。 大豆なのに固くなく、子どもも高齢者も好きな豆菓子でした。就農してから、いずれ商品化したいと思ってました」と孝志さん。

“ウマうま”にやられちゃいました、私

大豆は、ただ炒っただけではよくある硬い炒り豆になってしまいますが、独特の製法によりサクサク、ソリソリ(これ山形県人しかわからない表現w)の食感に。

秘伝豆をそんな方法で炒り豆にしている業者(@新潟県小千谷市)と、たまたま知り合い、「馬のかみしめ」を使って作ってもらえることになったのだそうです。

それが「馬のかみしめ ウマうまポリぽり」の誕生でした。ネーミングは孝志さんです。

「商品名に”ぽりぽり”は入れたいなと思ってたんですが、普通だと面白くないのでカタカナとひらがなを混ぜて”ポリぽり”に。”ウマうま”はもちろん、”馬”と”うまい”をかけています」

最初に発売したのは、味は味つけなしの「プレーン」だけ。その後「塩」味ができ、最後に「甘」味も発売に。どれも超シンプルな材料。他の商品同様、添加物は一切使用していません。

↑3タイプ比べて食べてみましたら…、ハマっちゃいました。意外にも「甘」に!!

東北だと、味が濃いものが人気かと思いますが、意外にも人気は「プレーン」。
甘いお菓子をあまり食べ慣れない私も、最初は「プレーン」と「塩」しか食べていませんでした。

それが!後になって「甘」を食べてみたところ、甘さはほんのり、ホントほ〜んのり控えめなんです。これがめちゃハマった。なんかわからないけど美味くてやめられない止まらないっ。ウマうまにやられたカンジです(^^ゞ

在来種を守り続ける遠藤さん達の努力に涙涙…

在来種がゆえにご苦労も多いようで。前述のように、枝豆は収穫期が2週間しかないうえに、豆の緑色はすぐに飛んでしまう。大豆も日に当たるとすぐに白くなってしまうのだそう。

そんなご苦労があっても、なぜこの在来種を広めようとしているのでしょう?

父・孝太郎さんは「馬のかみしめ」だけでなく、お米をはじめ、地元に残るさまざまな品種を積極的に生産し続けてきた方。今では市民権を得ている「行者菜」もひなた村が中心となって生産しています。

作物はどれも生産者を募ってみんなを巻き込み、知恵を出し合い作っているものばかりです。高齢化の進む地元で、品種を守り続けることはどんなにか大変なはず。収益にならないことも多いのでは?

「自分のことばっかり考えていだら、こんなことしてませんよ。自分が自分が、では楽しぐもなんともない。長井のことを考えながらみんなでやる。

なんだってそうだべ、一人でやれることなんでたかがしれてるんですよ。米も行者菜も花作大根も、みんなで作ってみんなで広めてきた。

みんなで作ってみんなで広めていがないと、作物の評価も長井の評価も高まらないべした」

そんな言葉をきいて、ほろりとしてしまいました。

孝太郎さんは続けます。「申し訳ないけども、うちはお米もできるだけ高い値段のところに貼り付いて売ろうとしてます。値段を下げないで頑張ろうと。

そうすると『ひなた村より安い』ということになって、みんなの作ったものが売れるんですよ。安い競争を始めたら、絶対プラスにはならないんだがら」

こんなに真摯に長井と向きあっている人たちがいることにカンドーさえ覚えました。田舎もまだまだ捨てたもんじゃない。

来て良かったなぁ。どこまでも続く大豆畑で見送ってくれた遠藤さん親子に手を振りながら、しみじみ思った日。

そうだ、今年の夏(秋?)こそ絶対に「馬のかみしめ」の枝豆を食べるぞ! 逃すもんか、収穫の2週間。とは言ってみたものの、どうやってゲットしたらいがんべ〜?

↑遠藤さん親子。本当の意味で”かっこいい”ってこういうことなんだなと感じました。

ひなた村 ホームページ 
https://hinatamura.jp/
ひなた村 Instagram 
@umanokamishime
https://www.instagram.com/umanokamishime/

商品名
ひなた村/馬のかみしめ ウマうまポリぽり
価格
馬のかみしめ ウマうまポリぽり[プレーン]399円(税込)
馬のかみしめ ウマうまポリぽり[塩]453円(税込)
馬のかみしめ ウマうまポリぽり[甘]453円(税込)
*以上は、道の駅「川のみなと長井」オンラインでの価格です。
販売期間
通年
購入できるサイト

道の駅「川のみなと」オンライン https://shop.jibasan.com/

*現在、県外では販売していないようです。東京・銀座の山形県アンテナショップ「美味しい山形プラザ」にぜひ置いていただきたく、「置いてください運動」をしようかなと思っているところです。ご協力いただける方は、ぜひハスミまでご連絡くださいね。